宮城県産業デザイン交流協議会

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MIDEC TIMES Vol,16

Report

●感性価値創造シンポジュウム
 「地域のものづくりとデザイン」開催報告

●MIDECセミナー
 食文化を通して地域をデザイン

●編集後記



 平成20年1月17日(木)に宮城県とMIDEC主催による、感性価値創造シンポジウム「地域のものづくりとデザイン」がせんだいメディアテーク7Fで開催された。MIDEC会員、企業経営者や学生、105名の参加者がありました。
 内容は盛りだくさんで、「第四の価値軸の提案〜感性価値創造イニシアティブ〜」のテーマで、経済産業省の諸永裕一氏。「日本のものづくりとデザイン」のテーマで田中デザイン事務所の田中義信氏の両氏から基調講演をいただきました。パネルディスカッションでは、デザインを主体にした各県事例紹介で、青森、山形、福島、宮城からの報告の後、東北工業大学デザイン工学科講師の梅田弘樹氏とアイリスオーヤマ(株)開発部統括マネージャーの佐藤耕平氏から地域や企業のものづくりに関する活動報告と提案がありました。
 「感性価値創造」は経済産業省が、これからのものづくりには必要不可欠な考え方と位置づけています。機能、品質、価格、そしてデザインはもとより、「こだわり」「もの語り」「歴史や文化」などのプラスアルファの感性価値を高め、生活者との共感を生むことが重要と、2010年度までを「感性価値創造イヤー」と名付け、産業活性化のための各種事業を実施しようとしています。幅広いデザイン活動の解釈では、すでに考えている内容ではないのかという意見もありましたが、日本のものづくりは安価な海外商品との差別化を図る必要があると思います。「感性価値創造」は、今後のものづくりにおける知恵と工夫で付加価値を高めるキーワードのひとつとして、さらには生活や文化の質を高める国民運動としても大いに期待したいところです。


次世代のインターネット
「三次元仮想空間・セカンドライフ」

「セカンドライフ」とはアメリカのリンデンラボ社が運営するインターネット上の三次元仮想空間です。現在、登録人口が1000万人を超えており、近い将来、億単位の人口になるともいわれております。この仮想空間はインターネットと同様に世界中のどこからでもアクセスが可能で、だれでも無料で「アバター」といわれる自分の分身をもつことができ、仮想空間内を自由に散策することができます。また、自分の土地を所有し、建物を建てて情報を提供することもできます。
セカンドライフは単なるネットゲームではなく、仮想空間内の建物や土地を利用して商取引やイベントの開催、会議やコミュニティの構築など、現実の世界と同様のことが行えます。国内の大手企業も数多く参入しており、バーチャル商圏でのノウハウ獲得のため、ユニークな空間を構築しています。インターネットが登場してまだ20年程度しか経過していない状況の中で、環境や技術、表現は急速に進化しているといえるでしょう。
 当社では宮城県の支援を受け、セカンドライフ内に宮城県を紹介する島を製作し公開しております。

「セカンド宮城」の紹介ホームページ http://www.second-miyagi.jp/

株式会社アイグラフ  猪狩 和浩



宮城県とMIDECの
セカンドライフへの取り組み

 宮城県では、「デジタルコンテンツ振興プロジェクト」事業において、セカンドライフ等のコンテンツ産業の振興に力を入れており、コンテンツデザインの有能な人材を多く輩出する教育機関のひとつである「デジタルハリウッド」との包括協定を、自治体としては全国で初めて締結しています。
 これらコンテンツ産業は、情報産業やデザイン分野の産業活性化も期待されており、宮城県庁および産業技術総合センター内でのさまざまな部署が連携してこの分野の産業支援を行っています。
 そんな中、MIDEC会員でもある(株)アイグラフの代表取締役の猪狩和浩氏を講師に、2007年9月と10月にセカンドライフセミナーを開催しました。
なお、当初1回のセミナー開催の予定でしたが、会場の席を大幅に上回る申し込みをいただき、急遽2回の開催となりました。
 セカンドライフは、現在、デザイナーやプログラマーやイベント企画者など、多くの方が能力を発揮できる新しい舞台として広まりつつあります。一方で、法整備が追いついていなかったりと、まだまだ発展途上であり、インターネットが広まり始めた頃の約10年前の状況と似ています。
 そんな中、初期段階にある今のうちにいかに訴求力のあるコンテンツを提供していくかが、今後の各人の展開の大きな足がかりとなるだろうとのお話をいただきました。参加者された方々は、セカンドライフの名前は聞いたことはあるけれども、動いている様子を見たことがない方が多く、立体的な世界で、ネットワークを通して様々な人とコミュニケーションできることに感心していました。
セカンドライフの新しい3次元空間も、ものは使いようであり、うまく活用できるチャンスを見いだせればデザインやプログラミングを活かし、事業領域が広がる可能性があります。
セカンドライフに興味を持たれたら、MIDECに相談してみてはいかがでしょうか。

宮城県産業技術総合センター  伊藤 利憲



●MIDECセミナー 食文化を通して地域をデザイン

 2008年第2弾のMIDECセミナーが1月21日(月)にエル・ソーラ仙台で開催された。講師は料理人の奥田政行さん。山形県櫛引町にあるイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフである。イタリア語の響きを持つ店名は実は庄内弁。「あ〜、そういえばこんな美味しい食べ物あ〜るけっちゃの〜」が由来である。庄内地方のおいしい食材を多くの人に知ってもらいたいという願いが込められている。
 山形県庄内地方は月山と鳥海山に囲まれているおかげで、ミネラル豊富な水が肥沃な土地を生み出し、海にも流れ込んでいる。そこに四季の力が作用しおいしい食材がたくさんある「食の都庄内」なのである。奥田シェフは地域を巡り志のある生産者のこだわりの食材を一つずつ集め、料理するとともに域外へも紹介してきた。国内外で精力的に活動し高い評価を得ている奥田シェフだが、その一つに山形県庄内地方の「食の親善大使」がある。その原点は、ある羊の生産飼育農家の思い入れとこだわりのおいしい羊肉との出会いだったそうだ。1頭仕入れるために、シェア先として東京の有名レストランに飛び込み営業し成立させた。大使就任前の話しで儲けなしの取り組みだった。あるときは庄内の生産農家案内ツアーの案内役も務めた。様々な活動が実を結び、今では庄内地方の食材の反響が大きく、先方から求められるようになった。足を使って地域のいい食材を探す、食べる、食べさせる、広める、生産農家は嬉しい、地域も誇りが持てる、人が来る、ますます広がる・・。「食の都庄内」は奥田シェフの熱い想いから始まり地域を元気にしてきた。これは食に限らず、また地域に限らず当てはまりそうだ。皆さんは、宮城県の「あったっちゃ〜(仙台弁?)」をいくつご存知ですか?
そして伝えていますか?

宮城県経済商工観光部新産業振興課 佐々木 和恵



輝いていたまちは元気だろうか?

 一村一品、地産地消、ことばは変わってもその底流にある本質に大きな差異はない。行政の一端にいる私はそんな思いで奥田シェフの話を聞いていた。批判していた人が仲間になり知恵袋に様変わりする。マスコミも行政もこぞって取り上げ、やがて強力な応援団に。かつてそんなことがあちこちであったような気がする。
 そして、そのまちは今も? 残念ながら輝きを放ち続けているまちは圧倒的に少ない。
 理論的な指導者がいても、それをとりまくキーパーソン(シェフの談を借りれば「食のコミュニティには、生産者、料理人、知識人」)が欠かせない。加えて地域に住む当事者が、第三者からの数多くの情報を整理し“収拾”選択する力とそれを地域なりに加工する知恵を身に付けないと、本当の地域力になり得ず持続的発展は望めないような気がする。
かくいう私自身も第三者から当事者に戻る機会を与えていただいたような思いになりシェフに感謝している。その意味でこれからの奥田シェフと庄内に大きな期待と関心を持たずにはいられない。

登米市役所職員 阿部 考弘


○他にも多くの方々から感想をいただきました。
ご紹介させていただきます。

・奥田さんは凄い人でしたね。
情熱、理性、理想…非常に刺激を受けました。今、奥田さんのような方が必要な存在ですね。仙台にもそんな気運が出るといいですね。

・多くの感銘がありました。
「人に頼らずに、まず自分自身が動こう」そんなメッセージが伝わってきました。
周囲を巻き込んで、ひとつひとつ夢を形にしていく姿は、見習うものがあります。私たちも、多くの人々と交流がある中で、人々を巻き込む人になってもいいでしょうし、巻き込まれる人になっても良いと思います。

・子供達が食べ汚すといけないので、お店に行くのを躊躇していたことを奥田さんに話したら、「どうぞいらしてください。子供達は、未来のお客さんで、未来の仲間ですから。将来、アルケッチャーノで食べたことを思い出してくれればうれしいです。」と言われました。今度、ぜひ行ってみようと思っています。


●編集後記
「セカンドライフ」、
「感性価値創造」のセミナーは、宮城が全国に先駆けて開催したもので、今後のデザイン活動の方向性を探ることができました。
奥田シェフのセミナーは、食を通して「地域の魅力」、「地産地消」をキーワードにした地域のデザイン運動です。庄内の自慢の食材とそれを生かした料理に全身全霊をかけて取り組んでこられたシェフの姿勢にエールを送りたいと思います。美味しいものは人々をしあわせな気持ちにします。「食」の安心安全が問われている中、食のもたらす力の大きさや食文化の大切さを改めて考えるきっかけとなりました。(K.S)



(2008年02月29日掲載)